Learning Volcanology
火山学を学ぶ
大阪公立大学 火山学研究室 三浦 大助
地球科学は,地球の過去・現在を紐解き,そして未来を照らす学問分野です.大地を構成する岩石の成り立ち,地震,火山噴火,津波,地すべりによる災害や,様々な地学事象のメカニズムを解明することが研究の中心となります.大阪公立大学の地球学教室には,皆さんの生活に関わる大地の構造と,その成り立ちを研究する先生達が集まっています.また地球科学は,防災科学の一翼を担っており,社会からの問いかけに向き合うという側面もあります.もしも近い将来に,巨大地震や火山噴火が起こったら,我々の生活はいったいどうなるのでしょうか?2018年の大阪府北部の地震や,北海道胆振東部地震では,大都市やインフラ設備の脆弱性が改めて浮き彫りになりました.このような災害に備えるため,防災に関わる知見を提供するのも地球科学の大事な役割です.
私の専門は火山学で,野外調査によって火山噴出物を調べ,火山が噴火するプロセスを研究しています.日本は世界有数の火山国で,世界の火山のおよそ1割が,この狭い国土に集中しています.したがって,火山噴火の防災対策は,我が国の宿命とも言えます.一方で,火山噴火はどこででも起こるという訳ではありません.火山は,地下深くから上昇してきたマグマの出口であり,その場所,つまり「火山」において噴火が繰り返されます.そこには,マグマが噴出するなんらかの理由があるはずです.私が進めてきた野外調査による研究は,正にその「火山」に赴き,火山の形や火山噴出物を調べることで,過去の噴火実績を明らかにすることを目的としています.野外調査は,人間から見ればとてつもなく大きな事象を,自分自身の五感で感じ取ることができ,火山を理解するための最も効果的な方法と考えられています.私はこれまで数多くの国内外の火山に赴き,その成り立ちを調べてきました.このような研究によって,火山がもつ噴火の潜在的能力が明らかにされ,火山対策の基礎資料となります.そして防災を始めとする社会活動に知見を役立てることができます.
学問の外に視野を拡げると,我が国の火山対策は,必ずしも順調に進んでいないようにも感じられます.1つの大きな理由は,地球科学の知見を駆使して,火山を調べることができる人材が著しく不足していることです.近年の災害経験により,調査・研究を通じて,火山噴火の現場で活躍できる人材の必要性が再認識されました.そしてようやく,噴火研究に関わる人材育成が声高に叫ばれるようになりました.今は,国が主導する大規模なプロジェクトも進行しており,火山学を学び,役立てる環境が徐々に整備されつつあります.
大阪公立大学の火山学研究室は,2018年4月より発足しました.野外調査を中心に火山噴出物の研究を行うことを特徴とする,全国でも数少ないスタイルの研究室です.大阪に活火山はありませんが,調査・研究のために全国へ,そして海外へも出かけていきます.他大学からの進学希望者も大いに歓迎しますので,情熱を持つ多くの学生・大学院生が集い,一緒に研究してくれることを期待しています.